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ハイケイ、アイバマサキサマ。ソシテ、シンアイナルアラシノミナサマヘ。
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以下、ネタばれあり。

公式HPにも載っているように、舞台セットは客席に食い込む形になっています。
LA席、D列10〜25、RA席に座る人たちは本当に近過ぎるくらい目の前で
お芝居をそして相葉さんを見ることになると思うので、そりゃもう大変だと思います。

セットはシンプルでその食い込んでいる部分に大きな箱板がひとつ。
中央が少し段になっていて、その高低差を利用して、
春也の実家である下駄屋さんの作業場と土間、病院の治療室と廊下みたいな、
ちょっとした場所の差別を表現することが出来ます。
本来の舞台側は高い階段状になっていて、WSでも少し映っていましたが、
幽体離脱の状態の春也が一人芝居をする場所だったり、
天国、もしくはあの世みたいな別世界にいる人しか立たない場所に使用されます。
病院のシーンでは箱板と舞台の間に扉あり。

私のラキガキで説明しますとこんな感じ。




物語は舞台セット同様にシンプルで、
ピアニストの道に挫折した春也が実家に戻り、家業の下駄屋を継ごうとするも、
ピアノを諦めた理由が自身の中で消化不足だったためお父さんともうまくいかず、
恋人の美智子がその理由を紐解きながら、春也にもう一度夢見る勇気を促すお話です。

時系列としては交通事故で瀕死状態の春也が病院に運び込まれるところから。
幽体離脱状態の春也が自分を見て、なんでこうなってしまったんだっけ?
と記憶を辿りながら時間を過去へ遡っていく流れです。
美智子(みっちゃん)との出逢い、幼なじみとの戯れ、お父さんとの関係。
場面を追って春也の過去が分かってくるのですが、
幽体離脱になってしまった経緯を先に話しますと、
みっちゃんとのドライブ中に追突事故を起こしてしまい、みっちゃんは即死。
春也は一命を取り止め病院に運び込まれるも、生死をさまようこととなりました。
ちなみに運転をしていたのはみっちゃんです。

雰囲気ものにはなりますが、
以下、みっちゃんと春也のやりとりを中心に文章を書きます。
私がここさえ押さえておけば大筋は伝わるだろうと
勝手な判断のもと抜粋したシーンだけ、なんとなく説明します。
セリフは解釈なので正しくはないけれどはずしてはないはずです。
あと、山の妨害にあった分(笑)飛んでしまった部分などは後日修正致します。
どうぞご了承下さいませ。では。


-------------------------------------------------------

ピアノソロ(稲本さん作曲)が流れる中、暗転。
激しい大音量のクラッシュ音。交通事故の音。相当激しい事故だと思われる。

病院のシーンでは正面に救急処置室の扉があり、
移動式ベッドで運び込まれる春也(実体)。
周りには病院スタッフ、幼なじみと妹。
春也(幽体)も一緒に入ってくる。
緊迫した病院の風景。
必死に対応する病院スタッフと周りで心配する幼なじみと妹。

春也「あの、すみません。俺、事故起こしちゃったみたいで…。
あの、誰か僕の話聞いてくれる暇な人は…いるわけないよなあ」

妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん、しっかりして!」
幼なじみ「なんでこんなことになったんだよ…」

春也のみ状況を把握していないが、誰にも呼びかけが伝わらないことと、
周りの応対、時折起こる激しい頭痛によりだんだんと何かがおかしいことを理解する。

映像でタイトルバック「君と見る千の夢」。
ひとつひとつの文字が動いて集結。

「春也!!」白い服で駆け込んでくるみっちゃん。

春也「ああ、みっちゃん。良かった。無事だったんだね」
みっちゃんに話しかけるも、春也の声はみっちゃんに届かない。

みっちゃん「ごめんなさい、春也。私が運転なんかしなければこんなことには…。
まだ話したいことがたくさんあったのに。神様、私はどうなっても構わない。
どうか春也を助けてください。ねえ、春也、目を覚ましてよ。私のことまた呼んで?
みっちゃんて…」

春也「みっ…ちゃん」

みっちゃん「ねえ、初めて会ったときのことを憶えてる?」

春也「憶えてるよ! 懐かしいなあ」

みっちゃんと初めて会ったのは実家の下駄屋さん。

春也「彼女が下駄をくださいって突然現れたときのことを今でも憶えている。
正直言うと、最初はちょっと変わった子だなって思ったんだよね」

春也、リモコンを持つような仕草でシーンを巻き戻し。
「ピッ」(←ってホントに言う笑)


実家の下駄屋さんで店番をする春也。
みっちゃんが入って来て店内を見回す。

みっちゃん「素敵な下駄ですね」
春也「あの、それは草履です」
みっちゃん「!!!」
横にあるもうひとつの履物を手に取るみっちゃん。
みっちゃん「わあ、素敵な下駄ですね」
春也「…それはつっかけです」
最後に残った履物を手に取ったみっちゃん。
みっちゃん「これ…は、」
春也「下駄ですよ」
みっちゃん「ですよね! 素敵!!」
みっちゃんは天然さんなのでした。

介護福祉士として老人ホームに勤めるみっちゃんは、
担当しているおじいさんに「履きやすい下駄」を頼まれたそう。
ネットで検索して老舗である春也の実家を探し当てたのだとか。

形の違い、木の違い、下駄のいろいろを説明する春也。
みっちゃんはメモ魔なのでポストイットに書いたメモを
手帳にぺたぺたと貼付けています。
ふと、みっちゃんの目に止まったのは春也の試作品。
それはとても売れるようなものではないから、拒む春也。

みっちゃん「どうして? これ、頑張って下駄になるぞーって感じがするじゃない?」

どうしてもこれが欲しいと言い張るみっちゃんに根負けして、
すぐに壊れると思うから困ったらすぐに連絡して?
と店の名刺を渡す春也。
意気揚々と春也の下駄を持ち帰るみっちゃん。

それが出逢いで、二人は少しずつ距離を縮めていくのでした。


WSでも流れていた和太鼓のシーン。
あれは商店街の催しで披露するためのものです。
幼馴染みでお豆腐屋さんの跡継ぎである竜ちゃんが春也にけしかけたもの。
ある日、みっちゃんが下駄屋さんを訪れるとみんなで練習していました。

ことあるごとに、さすがとか、リズム感が違うとか、
春也を誉める面々。その度に春也は口封じをしようとする。
きょとんとするみっちゃん。
春也が元ピアニストだということをみっちゃんはまだ知らない。


みっちゃんは老人ホームに勤めているので人の名前を覚えるのが得意。
覚えたての商店街の店の人たちの名前を春也と確認しながらふたりは公園へ。
みっちゃんがボランティアでやっているらしい、
ホームレスの人たちを支援する集い(?)の準備を二人でします。
春也はペットボトル。みっちゃんはお菓子やいろいろ入った紙袋を持って、
どっちが並べるのが早いか競争。最初はみっちゃんの方が早いけれど、
だんだんと春也が追いつくも、みっちゃんを勝たせようとしてちょっと待機。
けれど寸前で春也がさっとペットボトルを置いて悔しがるみっちゃん。
ちょう仲良し。一昔前の言い方でバカップルともいう。

ふたりで夢についてのお話。

春也「みっちゃんは将来何になりたいの?」
みっちゃん「立派な人!!」

老人ホームで働く傍らいろんなボランディアにも参加し、
政治にも興味があると言うみっちゃん。みっちゃんの夢は膨らむばかり。
いつかマスコミに追われてスキャンダルとかに巻き込まれたらどうしよう…!
みっちゃん、自分の妄想にもかかわらず真面目に蒼白顔。笑う春也。

ふと、みっちゃんは尋ねます。
春也くんの夢は何? 実家に戻るまで春也くんは何をしていたの?
答えに窮する春也。適当なことを言ってごまかそうとします。

春也「刑務所? 泥棒というか、窃盗…」
みっちゃん「ええ?」
春也「いや、嘘! えーとね、しょ、小説を書いてたんだ」
ちょっとエッチなやつ(笑)。ゴーストライターなんだけどさ」
みっちゃん「へええ!(何の疑いもなく真面目に受け取る)」
春也「ていうのも嘘でー。ほら、不景気だし。リストラっていうか、ね?」

自分のことを語りたくない春也を察してみっちゃんが言います。
いいの。本当のことを言わなくても。春也くんが言いたくなければ言わなくていい。
春也くんの過去に何があってもいい。
春也くんは今のままでいてくれたら、それだけでいいの。

(春也独白)
あのとき、みっちゃんが言わなくていいと言ってくれて、
俺はどれだけ救われたことだろう。その言葉が本当に嬉しかったんだ。

じゃあ、これからどんなことがしたい?
二人で見るこれからの夢。

うーん、野菜畑に行く。野菜みたいな色とりどりのソファを買う?
漫画喫茶に行く! そんでジョジョを全巻読破する!
おいしいものを食べたいな。あ、北海道に行くのは?
神田に古本を見に行く。あ、おいしいカレー屋さんがあるらしいよ?

次々と出る春也の夢をひとつひとつメモするみっちゃん。

みっちゃん「ねえ、温泉は?」
春也「いいねえ! 水着着て入るとかなしだからね」
春也「それから…シカゴ!!」
みっちゃん「シカゴ?」
春也「知らないの?三大交響楽団のひとつがあるんだ。
ムーティっていう指揮者がすごくてね」
とても興奮した様子でその良さを語る春也。
しかし、ふと我に返ってしまう。

春也「シカゴは…いいや。ごめんシカゴは嘘」
みっちゃん「どうして? 行きましょうよ、シカゴ」
春也「うん、いいんだ。シカゴは。ごめんね?」


ある日、妹の花がみっちゃんに春也の過去を教えます。
家にはスクラップ記事がいっぱい。
留学のことや過去の受賞歴、海外コンクールのことなど。
近所ではね、ちょっと有名だったんだよ?
すごいすごいと目を輝かせるみっちゃん。

一方、春也は下駄作り中。そこへお父さんがやってきて、様子を伺います。
お父さん「おまえ、木は何を使ってるんだ?」
春也「倉庫にあったやつ」
お父さん「あれはダメだ。まだよく乾いてないからすぐに割れてしまう」
春也「…そういうこと、もっと教えてよ」

おそらく、お父さんが下駄作りに関してアドバイス的なことをするのは珍しい。
その言葉をきっかけにおもむろにお父さんの前に立つ春也。

春也「父さん、お願いします。俺を弟子にしてください!」
お父さん「おまえ、ピアノはもういいのか」
春也「この店、継がせてください」
お父さん「だからピアノは?ピアノはもういいのか?」

春也「…教わったことをそのまま、テクニックばっかり重視されて。
ロボットみたいに弾かされてさ。ピアノって、お金がかかるんだよね。
結局は実力だけじゃないんだよ。派閥とかもあってさ。
クラシックなんて上品そうに見えるけど裏では結構いろいろあるし。
なんかやってられないよね」

お父さん「おまえ、金が足りないからピアノを辞めたのか…?
母さんが仕送りをした、あれじゃ足りないって言うのか?」

春也のピアノを誰よりも応援していたのは亡くなったお母さん。
才能にいち早く気付いてピアノを習わせたのもお母さん。
朝も晩も休むことなく春也のピアノのために働いて、
結局は死んでしまったお母さん。

お父さん「おまえのせいで母さんは死んだんだ。
それでもいいんだよ、母さんがそれを望んだんだ。
でも、おまえは母さんを裏切るのか。
ピアノ辞めたって帰ってきて下駄屋継ぐなんて言い出して、
おまえは結局逃げてるだけなんじゃないのか」

核心を突かれたように逆上する春也。

春也「じゃあ、父さんは? 母さんが死んでから酒ばっか飲んで。
父さんこそ逃げてるんじゃないの? いいよ分かったよ。
俺がこの家から出て行けばいいんだろう?」

家を飛び出す春也。
佇むお父さんと、あとを追うみっちゃん。

公園にて。

ふてくされたように横になる春也。

春也「ねえ、みっちゃん。一緒に暮らそう?
なんかさ、その方がしっくりくるんだよね。
俺のそばにはいつもみっちゃんがいて、笑ってて。
なんかそういうのが自然っていうか」

みっちゃん「あのね、春也。春也がブリの照り焼きが好きだっていうから、
花ちゃんと作ろうって話しててね。でもね、ブリには大根が必要なのよ。
なんていうの? 栄養素的に? だからね、思い切ってブリ大根にしてみたの!

春也「それは…ブリの照り焼きに大根おろしをかければよかったんじゃない?」

みっちゃん「!!!! 春也って、頭良いのねえ!」

大真面目に驚くみっちゃん。
なんだか肩の力が抜けてしまう春也。
ぽつりぽつりと話し始めます。

春也「最後の、チャンスだったんだ。コンクール。
最高の演奏をしてやろうって思ってた」

なのに、春也の出番のひとつ前に優秀なピアニストがあり、
圧倒的な演奏力を目の当たりにしてしまい、完全に自信を失ってしまった春也。

春也「もう何もかも自分より上なんだよ。ピアニストとして。
演奏も、オーラも、ルックスも。負ける、と思った。敵わないって。
恥をかくくらいなら出るのを辞めようって。このまま出なければまだ格好もつく」

気がつくと逃げるように会場を後にしていた春也は、
そのままピアノを辞めて実家の下駄屋へ帰ってきたのでした。

お母さんの期待に応えられなかった自分、
結局は自分自身がテクニックに溺れてしまったこと、
すべてを無駄にしてしまった負い目。
(このへんがWSで流れていた葛藤のシーンです)
けれど、お父さんにはすべてを見抜かれていて、
実家に戻ってからお父さんはまだ一度も「おかえり」と言ってくれない。

自分を攻め続ける春也の後ろからそっと抱きしめるみっちゃん。
そのまま向かい合い、春也はみっちゃんにキスを迫ろうとするも、
それも逃げと勢いだと気付いた春也は途中で止めてしまう。


再び、病院のシーン。
ラフマニノフ前奏曲。
デッキを春也の枕元に置いて聴かせる幼馴染み。
音楽療法が効くと聞いたことがあるのだと試みます。
春也聴こえるか?おまえの好きなピアノだぞ?

しかし、逆に春也は余計なことしやがって!と耳を塞ぎます。

春也の病状は思わしくなく、手術が必要な状態。
手術をしたとしても成功する確率は低く、
仮に成功しても、社会復帰出来るのか、体に麻痺が残ってしまうかどうか。
様々なケースを考えてどれが本当に春也のためになるのか、家族は悩みます。

妹の花はお兄ちゃんがどんな風になっても生きて欲しいと願います。
私が全力でお兄ちゃんのお世話をするもの!
けれど、お父さんはなかなか手術の承諾書にサインをすることが出来ません。
このまま死なせてやった方が春也のためになるんじゃないか。
障害が残ってまで生き続けることをあいつは望むのだろうか。

院長先生(相島一之)がお父さんに話します。
前に同じような患者がいました。手術は成功して彼は生きることが出来たけれど、
重い障害が残ってしまった。身体を動かずことも話すことも出来ない。
かろうじて筆談で周りに伝えた言葉は、
こ ろ し て く れ

けれど、それから周りは彼らを必死で看病し、なんとかリハビリを繰り返し、
退院出来るようになった。最後の日、看護婦さんが用意してくれたケーキ。
彼は筆談で、う れ し い と伝えた。ケーキが食べられるようになって嬉しい。

生きることより死ぬ方がいいなんてことはない。
春也くんを助けたいと思う気持ちが少しでもあるのなら、
わずかな可能性にかけてでも、手術をしましょう?

そのとき、春也の容態が急変。
事態は一刻を争います。
最後までサインをする手が動かせないお父さん。
必死にお父さんを説得する看護士(藤田朋子)。

お父さん、時間がないの!!
後悔するのはあとでだって遅くはないでしょう!?

はっとするようにサインをするお父さん。
春也は手術室へ運び込まれます。


シーンは戻り、回想。

大きな鞄に荷物を詰める春也。
お兄ちゃん、本当に出て行くの? 引き止めようとする花。
春也が向かう先には同じように大きな鞄を持ったみっちゃん。

ふたりは車に乗り込みます。
運転席にはみっちゃん。
みっちゃん「さあ、行きましょう」
春也「運転、ごめんね。任せていいの?」
みっちゃん「ええ、今日は私が」

道路標識でなんとなく方向を察する春也。

春也「これって、東京へ向かってるの?」
みっちゃん「そうよ」
春也「神田だっけ?古本屋見てカレーも食べるんだよね?」
みっちゃん「うん」

みっちゃん「ねえ、春也。シカゴへ行こう」
春也「…は?」

春也へチラシを渡すみっちゃん。

みっちゃん「今、東京に来てるんだって。ムーティって人!
春也好きだって言ってたでしょう? 観たいって言ってたよね?」

みっちゃんの発案に溜め息をつく春也。

春也「シカゴはもういいって言ったろう?」
みっちゃん「ううん、確かめに行こう、春也。
春也にとってピアノは本当に過去のものなのか。
終わった夢にしちゃっていいのか。確かめよう」

春也のためを思って行動するみっちゃん。
それはみっちゃんの自己満足だと言って抵抗する春也。

みっちゃん「私、花ちゃんに聞かせて貰ったの。春也のピアノ。
過去の演奏を録音したものがいっぱいあった。春也のピアノ本当に素敵だったの。
ねえ、ピアノを諦めてしまうこと、本当にいいの?」
春也「もういいんだって!夢とか幻とか、みっちゃんが見たいだけだろう?」

半ば振り切るようにそっぽを向いてしまう春也に落胆するみっちゃん。
二人は黙ってしまいます。

そのとき、みっちゃんが目を見開いた瞬間。
みっちゃん「きゃああ…!」
春也「うわあ…!!」

二人の乗った車はクラッシュ。暗転。


シーンは再び病院へ。

春也「思い出した…。俺がここにいるってことは。みっちゃんは…?」

病院のスタッフや家族のやりとりから、
みっちゃんは即死だったことを知る春也。

そんな…。

事態はまさに生死をさまよう緊急状態。
何度も春也の心臓に電気ショックが打たれます。
その度に幽体離脱の春也にも衝撃が。

春也、生きろ。戻って来い!
頑張れ、春也!
お兄ちゃん、頑張って!生きて戻って来て!

春也「イヤだ、みっちゃん。俺にはみっちゃんが…」

生と死の境目で必死にみっちゃんを探す春也。

舞台セット上段の階段(私のラキガキを参考にして頂いて笑)
上手に春也、下手にみっちゃん。
春也はみっちゃんに手を差し伸べようとします。

みっちゃん「春也、いいの。私のことはいいから、春也は生きて!」
春也「イヤだ、俺も一緒に逝く。みっちゃんのいない世界に戻ったって生きる意味がないよ」
みっちゃん「違うの。私のせいなのよ、運転を誤ったのは全部私のせいなの。
あの瞬間、見間違いかも知れないけれど、すれ違った気がしたの」
春也「え?」
みっちゃん「お母さん。一緒にいたのは多分、新しい家族。
私、一瞬それに気を取られてしまってハンドルを切り誤ってしまったの。
春也の言う通りなの。本当は現実から目を逸らして夢を見たがっていたのは
私の方なのかも知れない。本当は私、お母さんに愛されたかったのかも知れない」

みっちゃんの家族は両親が離婚して離ればなれ。
みっちゃんの大好きだったお父さんがリストラに遭った後、
お母さんは家を出て別の人と結婚してしまった。
本当はずっとお母さんに会いたかったけれど、
みっちゃんはずっとその哀しみを自分の胸に秘めていたのでした。

病室から春也を必死に見守るお父さんの声が聞こえます。
お父さん「春也、本当は。本当はおまえが家を継ぎたいって言ってくれて嬉しかったんだ。
でも、おまえが。本当はピアノを好きで仕方ないって。それはおまえの目を見ていれば分かる。
ピアノを弾くときのおまえの目は、本当に輝いていたんだ。
だから、ピアノはもういいだなんて、嘘だけはついて欲しくないと思って。
春也、戻って来い。生きるんだ」

みっちゃん「ほら、春也。もう行って?」
春也「でも、俺は。俺はみっちゃんがいないと…」

二人の間、光の中に紙吹雪がキラキラと舞い降ります。
それはメモ魔のみっちゃんが今までに書いたたくさんのポストイット。

神田の古本屋。野菜畑。ソファ。
漫画喫茶。温泉。シカゴ。
二人で見るはずだった、千も万もの夢。

みっちゃんと春也はひとつひとつを拾い上げて笑い合います。
そして、それらをすべて春也に差し出すみっちゃん。

みっちゃん「これは全部あなたの夢。あなたが生きて叶えるの。
私はそれで満足だから。あなたは生きなくちゃ」

みっちゃんを見つめ涙を流す春也。

春也「ほ、他には? 他には何をすればいい?
俺がみっちゃんの代わりに出来ること他に何かある?」

みっちゃん「色んな場所へ行って、色んなものを見て。
春也の宝箱をいっぱいにして?」

宝箱はその人の人生。生きて来た証。
最後にその宝箱をいっぱいに出来たら…と、
みっちゃんは老人ホームのおじいさんに教わったのでした。

春也「世界中を旅して回るよ。シカゴへも行く。
色んな場所へ行って、色んなものを見るよ。
辛いこともあるかもしれないけど、宝箱に何も残せないかも知れないけど、
俺にはピアノがあるから、大丈夫。みっちゃんの分まで生きるよ」

少しずつ離れていくふたり。

春也「みっちゃん、大丈夫?」
みっちゃん「ええ、私は大丈夫。全然大丈夫だから」
春也「きっとまた会えるよね?」

階段を降りて、病室へ向かう春也。
ベットの上に座り、自分の身体を重ね合わせます。
春也はこうして生き続けることを選びました。

目を覚ます春也。
みんなは喜びに湧きます。

お父さんの手を取っててのひらに文字を書く春也。

た だ い ま

涙をうかべて喜ぶお父さん。
おかえり。おかえり、春也。

おしまい。
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・ 春也くんとみっちゃん。
Rumyさん、こんにちは。
あらすじ書いてくださってありがとう。
みっちゃんのかわいさに涙・・。
せりふからみっちゃんのかわいさが伝わってきました。
お疲れさまでした。
buko 2010/05/17(Mon)14:44:27 編集
・ Re:春也くんとみっちゃん。/Rumy→bukoさん
bukoさん、こんばんは。

え、読んじゃって良かったの?と思ってしまいました。実際に観て違うじゃないのって肘で小突かないで下さいね(笑)。

みっちゃんの可愛さが伝わったのなら本望です。これ以上は何ものぞみません!!
2010/05/18 01:50
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